★忘れそうなのですがわたしは個人事業主なのです。

源泉の支払いをしに、税務署に行ってみました。


★わたしは本当に、お金の動きとか税に関して、いくら経験を積んでも、なかなか学ぶことが出来ません。税務署で誰かに尋ねよう・・・と思っていました。


★税務署のなかは、動きの少ない空気でいっぱいです。税務署の仕事は一本の道、必要以上の動きを取ったら、なにか、けがをしてしまいそうな空気、あらゆることを考え、いろいろなことに気がつくことが、それほど推奨されないのかしら、というのは、わたしが3階の源泉を納めるコーナーにいっても、誰も気づいてくれない、カウンターの向こうの、止まったひとびと。ああ、この源泉1000円ちょっとを、どうぞもらってあげてください・・・。なんとなくずっと気づかれないまま、立っていました。


★建物の入り口の奥の方には、「受付」と書かれたカウンターがあって、男性が座っていた。来客は少なかった。受付のカウンターに座っている男性も、動かない、まるで蝋人形のようだった。


★また、その受付の前に、税の相談室という札のかかった扉があった。

わたしは、今後の手続きについて尋ねたかったので、ちょうどよいと思って、受付男性に聞いてみたところ、ええどうぞ、入って相談して下さい、ということであった。


★コンコンコン、「税の相談室」のドアを開けてみた。


机、棚、ソファーセットもいくつかある広い部屋だ。


しかし、誰もいない。声もしない。


過剰なほどの暖房。観葉植物。この部屋は生きていないかのような、雰囲気。


「すみません」と声を挙げてみると、ついたての向こうにふたつ、机があるようで、そこから「どうぞ」という元気のない声が聞こえた。


じゅうたんを歩いて進んで行くと、ふたりの、たいへん高齢な男性が見える。


ああ、税の相談室。


わたしが、「個人事業主なのですが、アルバイト数名から源泉を取っていて、今後どのように手順を重ねてゆけばよいでしょうか」と尋ねると、「その書類には、説明書が一緒に送られてきたんじゃないの」とたずね、わたしが持っていた資料を渡すと、それをじっくりと眺め始めた。わたしはずっと、立ちっぱなしだ。


メガネをずりあげ、一行ずつ指でたどりながら、ゆっくり読む、税の相談員。


もうひとりの、仙人のような男性は、本当に音を立てずに、静止したまま、ついたての隣にいた(ようだ)。


わたしの目の前で資料を読んでいたほうの男性は、

そして、

ゆっくりわたしに告げた。


「・・・・・区役所で税のコーナーあるから、そこで聞いてくれますか」


わたしが「・・・お邪魔しました」と扉を閉めると、その部屋にはまた凪のような平和が訪れる。

ああ、じゃましてすまなかった、変な質問をしてすまなかった、個人事業主の税のあり方など念頭にきっとなかった、二人の老先生よ、税金返して・・・。